部下との人間関係に悩む上司が学ぶべき3つのスキル【コーチング入門】

Vol.3
コーチング入門
本間 正人 (著), 松瀬 理保(著)

 

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最近Webサイトの運営法やデザインに関する相談を受ける機会が多い。いざ相談を受けてみると、相手の意図を十分に汲みとり行動を促すということはシンプルだが奥が深く、多角的かつ幅広い知識と経験が必要だと分かった。コンサルティングやファシリテーション関連の入門書を探してるうちに「一冊でコーチングの全体像が掴める易しい本」として紹介されていた本書に出会った。実際に読んでみると評判通り、素人にも分かりやすく体系的に「コーチング」という概念を掴むことのできる良書であった。ポイントとなるところをメモしながら私なりに意見を述べていく。

コーチングの概念

コーチングと一言でいっても著者によって様々な意味レベルで用いられることが多く、読み手もコーチングの概念を捉えきるのは難しかったりする。本書ではコーチングを以下の3種類に大別して整理、解説されていた。

  • ビジネスコーチング

    上司が部下を育成に取り組む際のコーチング

  • プロフェッショナルコーチング

    (1)パーソナル・コーチング(個人客から報酬を受け取り、「電話で週1度30分」「対面で月二回」などの契約形態が一般的)
    (2)エグゼクティブ・コーチング(企業経費として支出され、企業経営に関するテーマを多く扱う)
    (3)社内コーチング(社内にプロのコーチを配置し幹部や管理職の課題解決のサポートを行う)

  • 分野別のコーチング

    「営業コーチング」「転職コーチング」「ダイエットコーチング」など特定のテーマに沿ったものや、「セルフコーチング」などのセルフマネジメントのコンサルなど

 

「本書はビジネスコーチングに重きを置いて解説する」という説明書きだったが、パーソナル・コーチングを学びたい私としても十二分に満足できる内容だった。「クライアントの意見を慎重に聴きポテンシャルを引き出すよう促す」ということはコーチングにおいて最も大切なことだからだ。必要なスキルについてまとめていく。

 

コーチングに求められるスキル

コーチングは何かを人に教えることではない。クライアントの可能性を引き出すこと、それがコーチングだ。そのために本書では主に以下の3つのスキルが重要であると解説されている。

1.傾聴のスキル 2.質問のスキル 3.承認のスキル

 

これらは専門的なスキルなんかではない。むしろ社会活動における必須のコミュニケーションスキルだ。つまりビジネスであろうが、趣味のサークルであろうが、学校だろうが、主婦の井戸端会議であろうがこの3つのスキルは確実に活かされる。それぞれを詳しくみていく。

傾聴のスキル

 「聴く力は人徳に比例する」と言われるほど、コーチングのスキルの中で、最も重要でかつ奥が深いのが、「傾聴」のスキルと言えるでしょう。

 人の話を丁寧に聴くことは意外と難しい。「うん、うん」と同意しているだけでは好感は持たれるかもしれないが会話自体の意味がなくなってくる。逆に一方的に意見を押し付けては相手を置いてけぼりにしてしまう。重要なのは「結論を急がない」ことだ。相手の意見を最後までゆっくり聞いたうえで、相手が自ら思考するような質問に繋げる。

質問のスキル

カウンセリングでは「答えはクライアントが持っている」という前提に立ちますが、コーチングの達人もまた、ほぼ例外なく質問の名人と言えるでしょう。各種の質問を駆使することで、部下が気づかない可能性を明らかにしたり、目標をうまく選ばせたりすることができるのです。 

第四章「質問のスキル」はとても読み応えがある。個人的に印象深かったのは、成功体験を引き出すヒーローインタビューに関する描写だ。インタビュアーはとにかく聞き手に徹して、うまくいった話や事実を丁寧に聴く。そしてその言葉をさらに深く追求する質問を投げかけていく。こうすることで相手本人は自らの仕事を振り返り、成功体験を強く身体い刻みこむことができる。表情は明るく生き生きしてきて、自信を引き出すことができる。この章では他にも「質問活用の基本原則」や「スケーリングについて」詳しく解説がある。 

承認のスキル

人間は動物の一種ですから、脳内の感情をつかさどる部分が刺激されることで、行動の変化が促進されます。ほめられれば、人はうれしい気持ちになり「よし頑張ろう!」とやる気が湧いてきます。そして意欲が湧いてくることで、行動に移すエネルギーが高まるのです。 

承認のスキルは3つの中では重要度が低い。が、コーチングでは必須のスキルだ。承認スキルには2つの側面があるという。「観察能力」というインプット的側面と、「メッセージの伝達」というアウトプット的側面だ。アウトプットでは効果的に部下を叱ることも大事だ。頭ごなしに否定するのではない。次の行動を促すための言葉を「怒り」という感情も混ぜて伝えることで効果的に意思伝達することができる。 

 

読書感想

「コミュニケーションスキル」とはよく聞くワードだが、まずコミュニケーションスキルってなんなんだろう。一般的には「話し方」、「態度」、「社交性」みたいなものの総合力がコミュ力と言われていると思う。でももっと原初的なことが重要なのではないか?とも思う。どういうことか。ぼくが考えるコミュ力の根幹はシンプルだ。

相手とシンクロしようとする姿勢

これだけだ。上記の傾聴・質問・承認のスキルは対話による問題解決のための技術だが、これらはいかに相手と自分をシンクロ(同調)できるかによってその効果が違ってくる。人間同士だから考え方や価値観は違って当然だが、前提を可能な限り共有し、どこに相手との共感のポイントがあり、そしてどこに違いがあるのか、ここを捉えるのがコンサルティングにおいて重要だ。そのためには相手にまずシンクロしてみる。この姿勢があるかどうかでコミュニケーションの密度が異なってくる。

コーチング入門 第2版 (日経文庫)」はこのシンクロしようとする姿勢を持った上で、いかにクライアントをより良い方向に導けるのか、その具体的な方法や考え方を知りたい方には満足できる内容だと思う。コンサルティングのような専門的な職業ではなくとも、部下とよりよい仕事をしたい、うまく指示を与えれるようになりたい。そんな方には諸手を挙げておすすめしたい本だ。

コーチング入門 第2版 (日経文庫)